グッド・アンシスター 

わたしたちは「よき祖先」good ancestor になれるか

世界各地でクリスマスイルミネーションが華やかに灯る時期となった。あるイルミネーションの点灯式を見て、LEDライトによる節電が免罪符となってしまったのかもしれないと思った。旧来の電灯に比べると消費電力は1/5というデータはあるし、たくさんの人がイルミネーションを見に集まることでそこの家は灯りや暖房を使わないので省エネになるとの説もあるそうだが。省エネ器機なんだから少しぐらい増やしたって構わないでしょう?では、環境負荷を減らすという観点からはバツだと思う。リサイクルしていると思うと、ペットボトルや発泡スチロール容器の使用に感じる罪悪感が減るのと同じように。

この本は、もはや一刻の猶予もない(とずっと前から言われているが)環境問題をとりまく現代の状況について書かれたものである。まだ生まれていない「物が言えない」何十年も先の子孫たちに、持続可能な地球を渡さなければならないというのが、タイトルに込められた思想。著者はローマン・クリツナリック、イギリスの文化思想家と紹介されている。

この本には、人間が環境破壊を止められない原因と、これからの解決策について網羅的に書かれており、現状分析と取り組み事例の列挙という感じだ。

長期思考と短期思考

著者は、「短期思考」こそが環境破壊を止められない一番の原因と考えている。短期思考とは、「わかっちゃいるけどやめられねぇ」こと。知る人ぞ知るクレージーキャッツのスーダラ節で繰り返される一節だが、現状はまさにこれなのだろう。今を生きて自分の命を次世代に繋ぐのが生物としては一番大事だから、目の前のことが優先されるのは無理もないことかもしれないが。

何十年も前からこのままではいけないと分かっていたのに、今の豊かな(と大多数の人が思っている)暮らしを手放したくはない。食べたい物を食べ、暑ければがんがん冷房する、レジャーと称してガソリンばらまいて移動する、など好き放題して環境を破壊し続ける。

「長期思考」とは、逆に何世代も先の子孫のことを考えて行動すること。これは人間が長い期間かけて授かった能力。古くは道具を作るから、何日もかけて動物を追いかけて仕留める、春に種をまき秋に収穫する、飢饉に備えて穀物を備蓄する、建材のために植林するなど人間の繁栄を支えてきたと言える思考だと著者は言う。生物の中でも人間だけは未来のことを考えて計画を立てて行動することもできるのだと。

つい先ごろ、アゼルバイジャンでCOP29が開催された。COPは「Conference of the Parties」の略で、「締約国会議」(条約を締結した国や地域が参加する会議)のこと。実際COPには様々なCOPがあるのだが、近頃COPといえば、国連気候変動枠組条約(UNFCCC=United Nations Framework Convention on Climate Change)のCOPであり、COP29は第29回目のUNFCCCのCOPという意味。UNFCCCは1992年に条約が採択され、1994年に50か国以上が批准したことにより発効。翌1995年から毎年COPが開催されている。京都議定書が採択されたのはCOP3。このように30年以上も前から国際会議の場で協議されてきた地球環境を巡る問題だが、各国の利害が対立して必ずしもうまく回っていない。

成功事例もある

この本を読むと、「ああ、やっぱり一筋縄ではいかないんだな」、「私ひとりが何かをしても何も変わらないのでは」と悲観的になるかもしれない。しかし著者は悲観論に陥らず、希望を持とうと言う。

顕著な例はオゾンホールの問題。冷蔵庫やエアコンに使われていたフロンガスがオゾン層を破壊して穴が開いている。紫外線が大量に降り注ぎ人体に悪影響を及ぼすという報告が出た。これについては奇跡的に世界の足並みがそろって1989年にモントリオール議定書が批准されて以降フロンガス等は代替フロンガスに置き換えられ、国連環境計画(UNEP)は2023年、2066年頃までに、破壊が確認される前の1980年のレベルに回復するとの予測を発表している。当時は決して回復しないという悲観論が流れていた記憶があるが、その気になってみんなでやったらやれるものだ。

自分が目の当たりにしてすごいと思ったのは、高校時代通学路に沿って流れていた北上川(正しくは北上川に沿って通学路があったのだが)の清流化。盛岡駅から市街地へ向かうとすぐ北上川にかかる開運橋を渡ることになる。ここから見る北上川と岩手山は今は盛岡のビュースポットのひとつだが、当時は赤茶色の水が流れる汚い川だった。原因は北上川の支流の一つ、閉山となった松尾鉱山から排水が流れ込む赤川だった。当時はこれも、元に戻すには気の遠くなるような年月がかかると言われていたが、気がついたらどんどん川はきれいになっていった。盛岡は2023年に訪れるべき世界の52か所で第2位に選ばれたが、北上川が汚いままだったらこの選出はなかっただろう。

これから半世紀以上生きる続ける若者たちへ

若者たちに言いたい。自分の余命は頑張ってもあと30年余、しかしあなたが今20歳なら、90歳まで生きるとして後70年も生きなければなりません。今地球では、生産できる自然資源の1.7倍の資源を消費していると試算されています。日本の財政と一緒で、毎年毎年借金をしています。今のところ返済のめどは立っていません。あなたたちの大部分が“のほほん”としているのをいいことに、大人たちはあなたたちのが使うべき未来の資源を食い荒らしています。あなたたちばかりではなく、あなたたちの子どもや孫たちの分も。だから、関心をもって情報を得て声を挙げましょう。アメリカのイーロン・マスクなどは地球はパンクしそうだから火星に移住しようなどと大真面目に考えていると言われていますが、何もない火星の荒野に住みたいですか。いや、人間が火星に住めるようになったとしても、行けるのは一握りの金持ちでしょう。世界の人口は増えていますが、耕地を限りなく増やすことはできません。気候変動による農業業への被害も増えていく可能性があります。食料不足はすぐ目の前に来ているかもしれません。お金で買えばいいと思う人もいるでしょうが、自国で足りなくなれば外国に食料を売ってくれる国はありません。いつまでも食料を輸入できるとは限らないのです。しかも日本はかつてほどお金持ちではありません。札束で世界中の食料を買いあさることはできなくなるでしょう。本気になるべきはあなたたち若者なのですよ。

最後に、環境書の環境白書について

まだまだ書きたいことはありますが長くなったので、環境省が出している環境白書を紹介して一旦終わります。これでほぼすべてが分ります。情報源もそれなりに信用できるはずです。

環境省:令和6年度環境白書 PDFで357ページあります。目次だけでもご覧ください。

全文は無理でも、第1章 第6次環境基本計画が目指すもの だけでも目を通してみてください。今年出された第6次環境基本計画は、第1次から30年の節目に作成されたもので、かなりの力作です。第1章とはいえ21ページもありますが、図もたくさんあり分かりやすいと思います。

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